沈黙の臓器・肝臓

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12月中旬となると、今年も終りなんだなと実感することが多くなってきます。

クリスマスの準備や、おせち料理のチラシ、そして忘年会をする会社の面々。

そう、この時期は忘年会の季節なのです。

 

一年をお疲れ様の意味をこめて、みんなでわいわいやる日本の行事であり、この時期はどこのお店も忘年会の人々でいっぱいになってしまいます。そして、それと同時に「急性アルコール中毒」が多い時期でも有ります。

 

まさに12月の風物死・・・いえ何でも有りません。

 

 

さて、このアルコールを始め、我々は生活の中で様々な薬物を摂取しております。

 

着色料、保存料、防腐剤、漂白剤などなど・・・日常の食物の中にも様々な薬物が入っています。しかし、これだけの薬物を常にとりながら、なぜ私達の身体は大丈夫なのでしょうか?

 

 

その答えは、人体の化学工場子こと「肝臓」のおかげです。

心臓の下に存在する器官であり、肝臓は複数の肝細胞と呼ばれる体内に入ってきた薬品を化学処理する細胞が集まって出来ています。この肝細胞は、一瞬で500種類以上の複雑な薬物処理をこなす事が出来、人体の中の最重要器官の1つです。

 

 

薬物の分解処理を行う肝臓。我々の身近にある有名な化学物質・アルコールをどのように分解しているのかを見てみましょう。

お酒を飲み、胃や腸より吸収されたアルコールは血管に入り、肝臓へと移動します。

 

肝臓を構成する肝細胞。その中には様々な「酵素」が存在し、これらが薬物の処理を行っています。今回、アルコールの分解を任せられている酵素は「アルコール脱水素酵素(ADH)」と呼ばれるものです。最初に、この酵素の働きにより肝臓内でアルコールはアセトアルデヒドと呼ばれる物質に変化させられます。この物質が体内に多く増えていくと人体に頭痛、吐き気、喉の渇き、振るえ等の症状を発症させ、これが俗に言う「二日酔い」となります。

 

アセトアルデヒドはその後、別の酵素により再び分解されて酢酸に変化させられ、再び血液に乗り筋肉や心臓で消費されて炭酸ガスへと変化します。

 

 

他の化学物質でも同じように酵素の働きにより様々な分解処理が行われているのですが、肝臓が一度に行える処理能力は決まっています。

 

現代人に多いとされる肝臓症状の1つ、脂肪肝。これはアルコールやタバコ等の有害物質の処理に追われて肝細胞が脂肪の処理にまで手が廻らなくなり、やがて細胞に脂肪が溜まっていく症状です。脂肪が溜まってしまった細胞はやがて死滅していくのですが、その死滅した細胞の隙間を生めるために強固な繊維質が作られていきます。

 

この繊維質が次々と作られて行く事により肝臓内の細胞を圧迫し、それによりまた細胞が死滅し・・・と繰り返され、だんだんと肝臓が繊維質の固まりになってしまいます。

 

その状態が「肝硬変」と呼ばれる状態です。

 

肝臓が悲鳴を上げるときは既に症状がかなり進んでしまった状態が大半です。

 

肝臓は再生能力が非常に高い臓器としても有名です。手術等で70%を切除して失ったとしても、半年もあれば元の大きさにまで戻ることが出来るほどの再生力を持っております。

ただ、その再生能力ゆえに異常が出たとしても、なかなか自覚症状として現れることが少なく、そのことから「沈黙の臓器」とも呼ばれております。肝臓の治療には早期発見が鍵を握っているので、本来ならば利点である筈のこの再生能力の高さが逆にあだとなっているわけですね。

 

 

目に見えず、多少痛めていてもわからない肝臓。わからないからこそ、私達は肝臓を特に気を配らなければなりません。定期的に検診を受けるのが一番わかりやすいかとは思われますが、「きちんと三食取る」「飲酒・タバコを控える」「適度な運動をする」「バランスの良い食事を取る」などの生活習慣から見直すのも良いでしょう。