灰汁(あく)代官「もっとちこう寄れ!ぐふふ…隠すでない。儂が取ってくれよう…」煮料理の邪魔者、灰汁の正体とは?

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食材を煮たりすると出てくる灰汁…調理の際に野菜や肉から出てくる「おいしくない成分」の事ですね。ちゃんとすくって捨てましょう。

お鍋などの料理だとよく見る訳ですが…この灰汁は食べてもまずいのは分かっているのですが、果たして本当に体に悪い物なのか?それとも実は捨てちゃっているけれども良い物なのか?どちらなのでしょうか??

 

そもそも灰汁には「動物から出る物」「植物から出る物」の2種類があります。

「動物から出る物」は肉から出る血液や溶けた出たタンパク質が煮られる事によって固まった物であり、薄い灰色や茶色をしております。基本的には味も舌触りもよくなく、栄養的にもタンパク質の塊なのですくって捨ててしまっても構わないものです。

「植物から出る灰汁」は動物性の物と比べるとまた違う物で、様々な成分が主となっておりますがそのほとんどが一貫して言える事が「植物が自己防衛のために備えている刺激物や防御物質」と言う事です。その為、その植物から発せられる成分もその種類によってまちまちで、それによって「苦み」「えぐみ」「しぶみ」等の様々な味が存在する訳です。

逆にそういった味覚的に悪い物であっても、人体には影響がない物や逆に実は良い物も多数あったりします。

 

シュウ酸:尿結石や腎結石の原因、カルシウムの吸収阻害の原因を作っている物質。灰汁としての味覚は「エグ味」となります。体内で吸収されてカルシウムと結合することによって結石を作るのですが、食事の際にカルシウムを含む物と一緒に調理したり一緒に食べたりする事によって結石化を避ける事が出来ます。ホウレンソウ等に多く含まれている物の、茹でられることによってその8割が溶け出してしまう。

 

チアミナーゼビタミンB1を破壊する成分であり、これによって脚気が引きおこる事もあります。灰汁としての味覚は「エグ味」。ゼンマイやワラビに多く含まれており、調理の際に灰汁抜きがちゃんと出来ておらずいっぱい食べると「ワラビ中毒」を起こす事があるが、それの原因。こちらも熱に弱いため食材をしっかりと過熱させることによってその効力を失活させることが十分に可能です。

 

サイカシン発がん性物質の一つで肝毒性があり、その他にも大腸や腎臓にも強い影響を出すと言われております。灰汁としての味覚は「エグ味」。こちらはソテツの葉や幹など植物全体的に多く含まれており、特にソテツの実に多く含まれていると言います。サイカシンは水溶性の為に水によくさらしたり、過熱を加えて分解をしないと中毒症状を起こす為に注意が必要です。ソテツを食べる機会が無い人もいるとは思いますが沖縄や鹿児島などでは一般的な食料として使われており、奄美大島で作られる「蘇鉄味噌」が良い例。

 

タンニン:植物由来のポリフェノールの総称であり、カテキンもタンニンの1種になります。抗菌作用や抗酸化作用、抗アレルギー作用を持っており、灰汁としての味覚は「渋味」になります。前者たちとは違い、人にとって有用な作用を持っておりお茶の他にもゴボウレンコン、芋類に含まれています。

 

クロロゲン酸:こちらもポリフェノールの一種であり、空気中にさらされることによって酸化し黒ずんだ色を発生させる。灰汁としての味覚は「苦味」。こちらも人体にとっては有用な作用を持っており、中性脂肪の蓄積を予防する作用や糖尿病の予防をしてくれる作用を持っています。ゴボウやタケノコなどに含まれています。

 

さて、抜かないと体に悪い灰汁と体に良い灰汁と二つの種類があるとお分かりいただけたとは思いますが、体に良い物があるからと言ってもやはり灰汁は灰汁。料理のおいしさを左右してしまう所でありますので、その辺はうまく調整しながら頂くのが良いでしょう。